メニエール病について
−ストレスとめまい−

 めまいは体のバランスを保つシステムに異常を来したときに起こる症状です。 これには周囲がぐるぐる回る、足下がふらふらする、地面が揺れている感じがするなど、 その原因や程度によって様々な感じ方をします。軽いものはしばらく休んでいれば治まる場合もありますが、 ひどい場合は2−3日動けない状態になり吐き気が出たり吐いたりするようなこともあります。 このようなめまいを起こす病気の中で最近話題になっているのがメニエール病です。

 メニエール病は反復するめまい発作と変動する耳鳴り難聴を特長とする病気で、明らかな原因は不明ですが、 その発症にはストレスが関与しているといわれています。メニエール病は内耳の音を感じ取ったり(蝸牛)、 体の傾き(耳石器)や回転(三半規管)を感知する感覚細胞の周りを満たしている内リンパといわれる液体の量が増えてしまうために起こると考えられています(前号参照)。

 メニエール病の頻度は10万人に10−40人位で近年増加傾向にあり、地域では都市部に多く、 職業ではストレスの溜まる職種に多いとされています。以前は男性に多いと言われていましたが、 最近は女性の割合が増加しており、現在では女性のほうが多くなっているようです。 これは職業を持った女性が増えてきていることと関係があると考えられています。 年齢では男性は40歳代に、女性は30歳代に多いという調査結果があります。

 ある日朝起きたら片方の耳が塞がった感じがして、それが2〜3日続いた後に急にめまいが起こり、 しばらくすると耳の塞がった感じがとれて次第にめまいも軽くなって、いつの間にか治ってしまう、 と言うのがメニエール病発作の典型的な経過です。 耳が塞がった感じがある時に聴力検査をすると難聴みられますが、程度が軽い場合は症状が治まると難聴も直ります。 しかし、このようなことを何回か繰り返しているうちに、めまいが軽快したときにも難聴が残ってしまうようになります。 めまいは時間が経つと治りますが、難聴は発作を繰り返しているうちに次第に悪化して行きます。 ですからなるべく早期に診断をして治療を開始し、発作を繰り返さないような注意をすることが難聴の進行を防ぐためには重要です。 また耳が塞がった感じがあるときには、突然強いめまいが起こる危険性があります。 ですからこのような症状があるときには、駅のプラットホームの端を歩いたり交通の激しい道路を通ることは非常に危険です。 突然ホームから転落して事故に遭う人の中には、このようなめまいによるものが含まれていると言われています。

 メニエール病は命に関わる病気ではないのですが、ストレスが関係していこともあって完治が難しい病気です。 自分の体調をうまく管理することによってある程度発作を予防することもできますので、 日常ストレスをためないように注意し、この病気とうまくつき合って行くことが大切と思います。

 最近増えている病気には、ストレスが関係しているものが多いようです。 これからは特に日頃からの心と体の管理がより大切になってくるのではないでしょうか。